この記事の対象者 所要時間
  • 不動産を購入する予定の個人事業主又は法人
  • 不動産を売却する予定の個人事業主又は法人
  • 個人事業主と法人の不動産売却にかかる税金を比較したい人
10分




個人事業主又は法人が不動産を売却する場合に共通すること

今回は、「不動産を売却するときに個人事業主と法人でどちらがお得か?」についてお話していきますが、不動産の売却という行為自体は変わらないので、個人事業主でも法人でも大部分の処理は共通してくることになります。

譲渡損益の計算の仕方

個人事業主であれ、法人であれ利益・損失の計算方法は同じになります。

つまり、不動産売却価額ー(不動産取得費用+譲渡費用)となります。

不動産の売却で得られる収入から不動産の取得にかかった費用と不動産を売却するまでに費やした費用を差し引いた金額がプラスなら譲渡益、マイナスなら譲渡損になるわけです。

不動産の売却取引で譲渡益が出ている場合の税金の計算方法

個人事業主であっても、法人であっても税金の計算方法は同じです。譲渡益の金額×税率で税金の金額が計算されます。

なお、税率についてですが、多少の違いがあります。

個人事業主の場合は5年超不動産を所有すると不動産売却時に短期譲渡所得になり、税率が20%になります。反対に所有期間が5年以下で不動産を売却してしまうと長期譲渡所得となり、税率が39%となります。法人の場合は5年という所有期間の区分ではなく、会社の規模と利益により税率が変わります。税率はおよそ30%程度です。

よって、税率だけから考えると個人事業主の短期譲渡所得になるのが、一番節税になります。

ただし、繰り返しになりますが、個人事業主であっても、法人であっても税金の計算方法自体は変わりません。

個人事業主又は法人が不動産を売却する場合に異なること

ここからが今日の本題です。不動産売却時に譲渡損がでてしまうと、個人事業主と法人の間で処理方法が異なります。

結論から言ってしまうと法人の方が圧倒的有利な税制になっています。それでは税法の中身を見ていきましょう。

個人事業主の場合

不動産売却時に譲渡損が出てしまうとそのほかの事業の利益と相殺すること(損益通算すること)ができません。

例えば、不動産賃貸の家賃収入から利益が出ていても、不動産売却の譲渡損とは相殺できないことになります。

法人の場合

不動産売却時に譲渡損が出てもそのほかの事業の利益と相殺することができます。

例えば、不動産賃貸の家賃収入から利益が出ていれば、不動産売却の譲渡損と相殺されて、最終的な税金の支払額は少なくなります。

売却損の取り扱いについて事例で見てみよう

個人事業主の税金の金額と法人の税金の金額を計算してください。

  • 個人事業主の税率は25%、法人の税率は30%である。
  • 不動産売却に伴う譲渡損は800万円である。
  • 不動産賃貸業の利益が別に900万円ある。
【解答】
個人事業主の税金の金額225万円、法人の税金の金額30万円

【解説】
①個人事業主の場合
不動産売却に伴う譲渡損は他の利益と相殺できません。
よって、不動産賃貸業の利益に税率を乗じた金額が納税額になります。
900万円×25%=225万円

②法人の場合
不動産売却に伴う譲渡損は他の利益と相殺できます。
よって、不動産賃貸業の利益から不動産売却に伴う譲渡損の金額を差し引いて税率を乗じた金額が納税額になります。
(900万円―800万円)×30%=30万円

上記事例からわかること

不動産売却に伴う譲渡損が出そうなら、法人の方が節税になることが分かります。逆に、不動産売却に伴う譲渡益が出た場合、5年超所有していたかどうかで個人事業主の方が有利か法人の方が有利かが変わってきます。

ただ近年、法人税率が切り下げ傾向にありますので、不動産を5年超所有しており、譲渡益が出てきた場合でも個人事業主と法人でそれほど大きな差はでないでしょう。むしろ、社会保険料を考えると、不動産を5年超所有していても、個人事業主の方が不利になる可能性もあります。

不動産の購入時点では最終的な売却で利益が出るか、損失がでるかなかなか分からないところがあります。可能であれば法人で不動産を所有していた方が、所有期間にも縛られず、不動産売却に伴う譲渡損を許容できることになります。